ほんのかんそう
文学フリマで出会う数々の御本。
どれも素敵で、もちろんちょっと違うなあ、と感じるところもあったりするものもありますが、文章や表現や表紙やらと見習いたいなと思う点もあり、ちまちまと読み進めています。
なるべく感想は呟くようにしているものの、どうしても技術的な感想が多くなってしまうので、ここ1年は物語的に感動したりいいなあと思った点を中心に、感想を呟くことのできるものだけを語るようにしています。
(ある意味で自戒でもあります。私も、物語的に何かを受け取らざるをえないものを書くので)
ということで、今日は読んだ本の感想とご紹介を。
ちなみに並行で読んでいるのは翡翠しおんさんの「循環世界は彼方に夢をみるか?」のchapter3-4です。全3冊の2冊目!どんどこ読み進めていきたいですね
「スノウ・ドーム〜あるいはアレクサンドル・サハロフの見た夢」 神田春 様
https://twitter.com/kanda_har_kg/status/992683769587875840
(大まかなあらすじが載っているウェブカタログへのリンクと、感想カードを書いた方へ短編をお渡しするというツイート)
雪、というもの自体に愛着やこだわりがありまして、雪を他の人はどのように表現なさるのだろう。どんな世界に雪を降らせるのだろう、など(言語化できる範囲ではこのような)疑問があるので、積極的に雪の使われているお話(かつ、文体の合うお話)を購入している私です。(※文フリ限定)
こちらのお話は宇宙空間のどこかの惑星に広がるドームの中で生きる人たちの、とあるミステリ……だと私は思いました。雰囲気としてはゼロ・グラビティの冒頭1〜2時間のあたり。
無音に近い降雪のBGMが似合うお話です。当然といえば当然、この、本来管理下にあり人間が過ごしやすい環境を生み出すドームに、なぜだか降雪が続くのですから。
主人公「俺」ないし「僕」は、かつて暮らしたドームに降雪が続き、転居を余儀なく言い渡されます。そして大きくなり、ドームを管理する側になった今、彼はドームの問題を解決するために、再びドームへ戻ってきます。
彼が出会うのは、人ではなく、管理システムであるAIアレクサンドロ・ニコラエヴィッチ。
人間のように語り、意思疎通のできるアレクサンドロに、主人公は尋ねます。
「環境に生じている不具合を認識しているか?」
しかし、アレクサンドロは意外にも、こう答えるのでした。
「管理システムに、エラーはない」
そんなあらすじのこちらの話。私が好きだなと感じたのは世界観と設定、そして主人公が真相にたどり着く過程でしょうか。
どこか洋画のようなテンション・雰囲気を感じました。それはSFっぽいからなのか、はたまた彼らの名前がカタカナだからか、明確な理由は持てませんでしたが、そのように感じました。
世界観と設定、と挙げたのは、ドームがあるだけでなくその管理を行うエンジニアがいて、さらに彼らの所属するものが「〜社」という会社だからです。
いや本当に会社かはわからないのですが、公務員やお役所的なものが社になったのかもしれないんですが、生命に大きく関わるドームを管理するのがとある「会社」ってロマンありません?その会社がいかに倫理と信念を正しく持っているか、が問われるわけですよ。まあ本編を読めばお察しな点ももちろんありますが、私はいいなあと思いました。名前も素敵。
そういえば、こちらのお話もそうでしたが、
AIに対して最終的にはやはり感情的なやりとりが発生することが、今の人類が見ている未来なのでしょうか。
PCでもそうですけど、人間って別の素材でできた人間を求めて作る動物なのかなあ、と思う時が多々あります。興味深いなあ。